鰐口
わにぐち
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 南北朝時代末期の永徳3年(1383)に鋳造された青銅製の鰐口で、大きさは直径22㎝、厚さ9.5㎝である。表裏両面ともに様式的には同じ二重の圏線で、縁・銘帯(外区)・内区・撞座(どうざ)を区分しているが、撞座には蓮華などの紋様はない。
 表面には「奉懸御宝前鰐口周防国熊毛郡小周防東方東興禅寺」「永徳三年癸亥七月初八日勧進沙弥道琳敬白」「諸行無常是正滅法」「生滅滅己寂滅為楽」と刻銘があり、裏面には「高尾山常灯寺願主敬白」「応永■六丑年三月八日」と刻まれている。さらに、開口部と鐶座の間の右手に「宮松」、左手に「氏女」と人名らしい刻銘もある。
 これらの刻銘によると、この鰐口は永徳3年(1383)に現在の山口県光市にあった東興禅寺のものとして鋳造され、のちに常灯寺に移り、さらにこの観音寺に移されたことがわかる。
 紋様は簡素であるが、鐶座や開口部の鋳上りもよく、全体の型もよく整っており、初銘のしっかりした書体などをみると、まさしく鎌倉時代の特色を伝えた南北朝時代の数少ない作品の一つということができる。

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