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地名をあるく 96.災害と地名

ページID:0013932 印刷用ページを表示する 掲載日:2014年12月25日更新

 私たちの住む地域には、たくさんの地名があります。地名は生活上必要に基づきできていて、その地域に住む人々の多数が認めていなければ、地名にならないのです。ですから、私たちにとって大変身近なものなのです。誰が多様な地名を作ったのでしょうか。大部分は古代から現代まで名もない庶民によって、それぞれの土地(場所)のイメージを表現して使われるようになったのです。自然環境の特徴やその地域の歴史を伝えていて、必ず一つの意味を持っているのです。即ち、地名は「土地に刻まれた歴史の生き証人」といえます。地名の意味を知っておくことが自然に親しむことになるのです。


 地名は、そこがどんな地形で過去に「地辷り(じすべり)があったところ」だとか、「土砂災害があったところ」「崩壊しやすい場所」だとか「水が乏しい場所」などなど語ってくれています。今では「地名の秘密」が分からなくなっています。無秩序に都市化が進んでいて、コンクリートの道や構造物で覆われていたり、合併などによって新しい地名になったりすることがあって、古くからあった地名が忘れられ、誰もがその地域の自然や地形など知らないまま、家を建てたり宅地を造成して、生活していることが多いのです。


 例えば、先月八月二〇日未明に、広島市安佐南区「八木」地区や「緑井」地区で起きた大変な土砂災害は、花崗岩の山砂利層でできた中国山地が広島平野(沖積平野)に突き出した場所で、そこには太田川が曲がりくねって、安武山(五八六・二メートル、崩崖地形の地名)のすそを囲むように流れ出ている場所なのです。災害が起きたのは、豪雨によって花崗岩質の安武山の南斜面が崩れて、山裾の斜面にできていた団地や宅地に大変な被害をもたらしたものでした。この付近の「八木」「緑井」という地名には、「山間の狭い谷」「湿地で水の多いところ」という意味があって、見逃してならない地形を語ってくれていたのです。八月二十七日の「産経新聞」の「産経抄」というコラム欄に『この地域はかつて「八木蛇落地悪谷
」と呼ばれていたと古くからの住民は説明する。蛇が降るような水害が多かったところから悪い谷の名が古くからあったところで、「崩壊地名」があって、警告してくれていたのだ』と指摘しています。このように古くから伝わる地名の意味・由来を今の人々が理解していなかったために被害が大きくなったのかもしれません。


 このような例は各地にあります。他所ごとではないのです。私たちの住む高梁市内にも山崩れ、地辷りなどの場所をよく見掛けます。


 郷土高梁の地域も吉備高原の山々で囲まれていて、地形も花崗岩の風化されたまさ土に覆われた場所が多く山の傾斜部分は崩れやすく、過去に地辷りを起こした場所や、崩壊した場所があって、こういった地形は豪雨によって誘引され、過去の土砂崩れの場所の再活動によるものが多いのです。こういった場所は、地名が危険を語ってくれているのです。


 例えば「秋町」とか「大津寄」(拙稿「地名を歩く」六十九参照)、「迫」(同九十五)、「狭門」(同八十)、「笠神」(龍頭)(同七十二)、「大竹」(同五十九)、「井谷」(「地名さんぽ」二十二)、「肉谷」(同三十五)など、いずれも崩壊地形を語ってくれている地名なのです。


 地名には、地形、山、川、崖などを意味する自然地名と宗教・信仰・集落・開発・行政などを意味する文化地名(歴史地名)があります。


 最近、高梁市が「洪水・土砂災害ハザードマップ」(防災マップ)を出して各戸に配布しています。その地図に示された内容を読み取り、地名とともに考え、これからの生活の安心・安全のために、自然を深く知ることが求められているのです。

  (文・松前俊洋さん)