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地名をあるく 95.迫・砂

ページID:0013930 印刷用ページを表示する 掲載日:2014年12月25日更新

 私たちの住む郷土は、山々に囲まれ、平地に乏しいところで、地形の変化が顕著な山間地帯であります。したがって、地形や地貎を区分して表現する地名が圧倒的に多いのです。それは、地形の変化が複雑で、誰の目にも共通に映る目印になるから、地名化しやすいのかも知れません。


 例えば、高い地形のところでは、岳(タケ)とか、尾根(オネ)・曽根(ソネ)などが…。台地状のところで目につきやすい所では、崎(サキ)・棚(タナ)などが…。また傾斜地では、平(ヒラ)・坂(サカ)・峠(タワ)などが地名になり、低いところの地名では、川(カワ)・沢(サワ)・谷(タニ)・窪(クボ)とか、沼(ヌマ)・清水(シミズ)などが使われます。平面的な場所では、原(ハラ)・野(ノ)・和田(ワダ)、また、谷が狭まっているような地形のところでは、迫(サコ)・砂(サコ)・狭間(サマ)が人々の会話の中によく使われています。


 中でも平地に乏しく、地形が複雑に入り込んだこの地方には、「迫」や「砂」と付いた小地名が多く見られるのです。


 高倉町飯部の高谷から大栢を通り、新見市法曽へと続く谷筋に「秋ヶ迫」の地名があります。ここは、小さな谷に沿って水田が階段状に連なり、江戸時代は飯部村の枝村としての「秋迫村」があって、新見往来の副道が通っていました。


 このような「さこ地名」は、山の尾根と尾根に挟まれた窪地で、狭くなった地形の場所に付けられている地名で、「秋迫」の付近には、ほかにも「堂野迫」「井迫」などの「さこ地名」が残っています。


 また、落合町阿部の「藤倉」は、以前「迫田」と言われていたところで、国道313号と成羽川に沿って、両側から山が迫り、地形が狭くなった場所で付けられた「さこ地名」の一つです。


 このほかにも市内いたるところに「さこ地名」が見られます。川面町の吉祥寺下の久賀に古くから「穴迫」と呼ばれていたところがあります。


 中井町には「西迫道ノ上」「奥西迫」や井戸の谷筋に「大迫」「舟迫」が、津川町八川にも「高下砂(迫)」の地名が見られます。


 地形の複雑な川上町、備中町には、特にこの地名が多く、「西ノ迫」「川迫」「才ノ迫」「こごろ迫」「大迫」「東が迫」「堂ノ迫」「芋迫」「枝迫」「前迫」などのいたる所に「さこ地名」が見られ、地形の変化が複雑なことを物語っているのです。


 「さこ」という地名には、「迫」「佐古」「砂」「狭処」という漢字を当てたり「瀬古」「佐久」などと表現するところもあります。いずれも狭あいな地形をした場所に使われているのです。


 平地に乏しいこの地方では、古くからこういった狭い河谷や窪を生活の場として、よく利用してきたために、微細な地形の変化に注目し、地形を表現する名称(地名)を用いてきたのです。


 人の会話の中で地名を言えば、場所的な特徴がすぐに思い浮かび、印象づけられて、お互いが分かり合えたのです。「さこ地名」は、特に岡山県から西の中国地方と九州地方に多いと言われ、地形を表す自然地名の一つなのです。

  (文・松前俊洋さん)