高梁市備中町平川に所在する鋤崎八幡神社で毎年11月3日に開催されている秋祭りが、平成28年2月5日の岡山県の告示を受けて、正式に岡山県の重要無形民俗文化財に指定されました。
名 称 : 鋤崎八幡神社の秋祭り(すきさきはちまんじんじゃのあきまつり)
種 別 : 岡山県指定重要無形民俗文化財
開催時期 : 例年11月3日
開催場所 : 高梁市備中町平川(鋤崎八幡神社)
保護団体 : 平川渡り拍子保存会
指定番号 : 民第四七号
例年11月3日に行われる鋤崎八幡神社の秋祭りは、跳び子(とびこ)が鉦(かね)に合わせてバチで打ち踊る勇壮華麗な「渡り拍子(わたりびょうし)」で始まります。「湯立て神事」「御神幸」と続いて、最後の「宮座行事」では酒宴の後「七肩半の角力(ななかたはんのすもう)」が行われます。この祭りは、地縁的色彩が強く投影された伝統的な民俗伝承として、民俗学的にも芸能史的にも高く評価されます。
渡り拍子 | 渡り拍子(御旅所) | 湯立て神事 |
鋤崎八幡神社は、応神天皇、神功皇后、豊鋤入姫命、玉依姫命を祭神とし、建武3(1336)年に領家職に任ぜられた平川掃部介高親が石清水八幡宮を勧請したものと言われています。
例年11月3日に行われる秋祭りでは、「渡り拍子」「湯立て神事」「御神幸」に続き、最後に拝殿で「宮座行事」が行われます。なかでも渡り拍子は、御神幸の供養楽として、美麗の花笠と衣装で飾った四人一組の跳び子が数組、鉦に合わせて太鼓のまわりを跳び回りながらバチで打ち踊ります。これを楽を跳ぶといい、その様は勇壮華麗で念仏踊り系風流の芸態を示すものといわれ、祭りの最も華やかな場面です。続いて行われる湯立て神事では、神職による祝詞奏上の後、湯につけた篠によって社殿、神輿が清められ、このとき三基の神輿に神が宿るとされます。御神幸では、槍を持った猿田彦を先頭にした行列がかつての神田跡である御旅所に向かい、そこで再度渡り拍子が奉仕され、この祭礼の最大の見せ場を迎えます。
最後に拝殿に東西の座が設けられ、うたげと称される宮座行事が始まります。座員による口上によって酒宴は進行し、その後「七肩半の角力」が行われる。東西の座員七組が拝殿の前庭で相撲の所作を繰りかえし、再度に西座から一人が出て、片肌を脱いで神との相撲である「ひとり角力」の所作を行い、宮座行事は終了します。
鋤崎八幡神社の秋祭りは、時代の推移とともに祭礼組織や宮座構成員等に変容が見られはするものの、今なお備中中西部の山間地における地縁的色彩の強く投影された伝統的な民俗として伝承され、民俗学的にも芸能史的にも高く評価されます。